見えないものに触れたとき、関係は動き出す

こんにちは、岡村拓朗です。
人は、本当に「見ている」のでしょうか。
私たちは、相手の言葉を聞き、表情を見て、理解したつもりになることがあります。
でも、そのとき実際に捉えているものは、本当にその人の全体なのでしょうか。
人や組織は、どうすれば動くのか。日頃、私は講師やコンサルタント、コーチとして、企業や行政機関のお客様に関わりながら仕事をしています。
人材育成や組織開発の現場に立っていると、「人やチームをどう動かしたらいいのか」という切実な声に数多く触れます。
「ポジション」の力では動かせないもの
かつての私は、先生や講師というポジションの力で人を動かそうとしていました。
正しさを提示し、方向を示し、その場をコントロールすることで、人を動かそうとしていた時期がありました。
一定の成果は出ます。
ただ、その状態を続けることには限界がありました。
常に「正しくあらねばならない」という緊張の中で、
自分の一部だけを切り出して振る舞い続ける。
その感覚に、どこか無理が生じていたのだと思います。
等身大で関わるという選択
その後、「システムコーチング」というアプローチに出会いました。
関係性や場全体を一つのシステムとして捉え、個人だけでなく、その間に流れているものにも働きかけていく考え方です。
ポジションの力だけに頼らなくても人は動く。
そう理解したことで、私は「等身大で関わる」ということを意識するようになりました。
すると、不思議なことに見え方が変わってきます。
その人がどんな役割を背負っているのか。
どんな背景を持っているのか。
そして、言葉には現れていない何かが、確かにそこにあるように感じられるようになってきたのです。
見えているけれど、見えていないもの
たとえば、研修で発表をしている場面。
笑顔で自信ありげに話している。
内容も整っていて、いわゆる「うまく話している」状態です。
ただ、その中にわずかな違和感が混ざることがあります。
言葉は整っているのに、どこか噛み合っていない。
表情は笑っているのに、身体の緊張が抜けていない。
私は、そのズレを意識的に見ようとしています。
言葉として現れているものと、その奥にあるもの。
その両方を同時に捉えたときに、初めてその人の状態が立ち現れてくるように感じるのです。
また、個人だけでなく、その場に流れている空気の質感も同じように見ています。
教室に入った瞬間に感じる、わずかな硬さや緩み。
言葉にはならない熱量の差。
それらは目に見えませんが、確実にその場の意思決定や振る舞いに影響しています。
なぜそこを見ているのか。
なぜそれを大切にしているのか。
自分でも、はっきりと説明できるわけではありません。
輪郭が立ち上がる瞬間
ただ、見えていなかったものが見えた瞬間に、全体の輪郭が一気に立ち上がる感覚があります。
複数のピースが、ばらばらだった状態から急につながる。
それまで曖昧だったものが、構造として見えてくる。
その瞬間に、強く惹かれているのだと思います。
「分かっているのに動けない」ということ
「分かっているけれど、できない」という状態があります。
頭では理解しているのに、行動にはつながらない。
この状態は、見えている情報だけで捉えようとすると、起こりやすいのではないかと感じています。
人の思考は、感情や感覚の後に生まれる。
そう考えると、見えていない部分に触れないままでは、変化は起こりにくいのかもしれません。
内側と外側、両方から働きかける
一方で、個人の内面だけではなく、環境や制度の影響も無視できません。
人は環境の中で生きている以上、内側と外側の両方を見ていく必要があります。
私はその全体像を捉えるために、「内側と外側」「個人と集団」という視点を行き来しながら関わっています。
一つの側面だけではなく、全体の構造として捉えようとするためです。
ただ、それでもなお、どこまでが見えていて、どこからが見えていないのかは、簡単には分かりきらないものでもあります。
私たちは、どこまでを「見ている」と言えるのでしょうか。
この問いは、おそらく簡単には答えが出ないものだと思います。
ただ、見えていると思っているものの奥に、まだ見えていないものがあるのだとしたら。
そこに、どのように触れていくのか。
そのことを、もう少し考えてみたいと思っています。
引き続きこの日誌では、少し長いスパンで、「見えているけれど実は見えていないもの」の見方、人の成長や発達に関すること、組織の葛藤や発達に関することなどに焦点を当てながら、人文科学と経営科学を織り交ぜて言葉を綴っていきたいと思っています。
私の日誌に少しでも興味や関心を持ってくださったなら、今後もちょっと覗きに来てもらえたらうれしいです。そして、あなたが受け取ったこともぜひ教えてほしいです。
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